猫のFIPを知ろう|基本知識と知っておきたい近年の変化【QOL南大阪保護猫シェルター】

猫のFIPを知ろう|基本知識と知っておきたい近年の変化

FIPは、昔から猫の病気の中でも特に重く受け止められてきた病気です。

約10年前までは、FIPと診断されたら、ほぼ助からない病気として受け止められることが多く、100%死亡を覚悟したという方も少なくありませんでした。

しかし近年は、抗ウイルス薬の開発と普及によって、FIPは早期発見なら寛解を目指せる病気へと大きく変わってきました。

ここでは、FIPとはどのような病気なのか、基本的な知識と、知っておきたい近年の変化を分かりやすくまとめます。

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FIPとはどんな病気?

FIPは、猫伝染性腹膜炎と呼ばれる病気です。

もともと猫の間で広く見られる猫コロナウイルスが関わり、その一部が体の中で問題を起こして発症すると考えられています。

保護猫では、約半分ほどが猫コロナウイルスを保有していると考えられることもあります。

ただし、猫コロナウイルスを持っているだけでFIPを発症するわけではありません。実際には、ほとんどの猫は生涯FIPを発症することなく一生を終えます。

FIPは、その猫コロナウイルスが突然変異して身体に影響を及ぼした時に発症すると考えられています。

なぜ発症するのかは、まだ研究が十分に追いついていない部分もありますが、主に猫のストレス性のものが一因であることが多いと考えられています。


猫コロナウイルスはどう広がる?FIPウイルスはうつる?

突然変異する前の通常の猫コロナウイルスは、どうやって猫に感染するかというと、主にうんちを介した接触感染によるものが多いとされています。

そのため、多頭飼育環境やトイレの共有が多い環境では、猫コロナウイルス自体は広がりやすくなります。

一方で、体の中で突然変異してFIPを起こしたウイルスは、他の猫に感染するものではないと考えられています。

つまり、猫コロナウイルスそのものはありふれたウイルスですが、FIPとして発症するかどうかは別の問題として考える必要があります。


FIPで見られることがある基本症状

FIPの症状はひとつではなく、出方にも個体差があります。

特によく知られているのは、腹水がたまる胸水がたまるといった変化です。

そのほかにも、元気消失、発熱、食欲低下、体重減少、お腹が張って見える、呼吸が苦しそうになる、目の異常、神経症状など、さまざまな形で現れることがあります。

そのため、「何となく元気がない」「なかなか治らない」「お腹がふくらんできた」といった形で始まり、診断まで時間がかかることもあります。


昔は非常に厳しい病気と考えられていました

FIPは、長いあいだ「診断されたらほぼ助からない病気」として知られてきました。

実際、抗ウイルス治療が広まる前は予後が非常に悪く、診断後は短い期間で亡くなることが多い病気でした。

そのため、FIPという言葉には、今でもとても強い不安のイメージが残っています。


近年は「治療できる病気」へ大きく変わってきました

近年、FIPの治療に使われる抗ウイルス薬が開発され、FIPは大きく状況が変わりました。

代表的な名前としては、GS-441524、モルヌピラビル、その活性代謝物であるEIDD-1931などがあります。

また、飼い主さんの間では、ムティアン、ラプコンといった名前で知られる製品名・通称に触れることもあります。

現在は、FIPは「治療可能で、しばしば治癒も目指せる病気」として受け止められるようになってきています。


高額治療が大きな壁だった時期もありました

ただし、薬が出てきた当初は、FIP治療には100万円以上かかることも珍しくなく、その金額ゆえに治療を断念せざるを得ない方も多くいました。

FIPの治療が「効くかもしれない」段階から「現実に使えるか」が問題になり、多くの飼い主さんにとって大きな負担だった時期があります。

そのため、FIPは治療法が見えてきても、すぐに誰でも助けられる病気ではありませんでした。


近年さらに治療の選択肢が広がってきました

その後、世界的な新型コロナ流行の時期を経て、人のコロナ治療薬として知られるモルヌピラビルが、猫のFIPにも有効な選択肢として広く認知されるようになってきました。

特にモルヌピラビルは、後進国で作られたジェネリック薬が広まったことで、従来の高額治療と比べて段違いに費用を抑えやすくなりました。

その結果、日本でもモルヌピラビルは費用面から選ばれやすい治療法となってきており、猫のFIP治療で主流の一角になりつつあります。

もちろん、GS-441524をはじめとした他の抗ウイルス薬も重要な治療選択肢ですが、以前より「治療できるかどうか」だけでなく、「現実に治療へ踏み出せるか」という点でも、大きく状況が変わってきています。


どうやってFIPを診断するの?

FIPの診断は、ひとつの検査だけで簡単に決められるものではありません。

血液検査の数値、便のPCR検査、採取した腹水や胸水のPCR検査や病理検査など、いくつかの情報を組み合わせて判断していきます。

特に腹水や胸水がある場合は、それを採取して調べることが診断の大きな助けになります。

ただし、FIPの進行は非常に速く、早期治療開始がキーポイントになります。

そのため、病理検査などの結果をすべて待つ余裕がなく、強くFIPが疑われる場合には、FIPだと仮定して治療開始することも少なくありません。


早期発見がとても大切です

FIPは、治療薬があるから大丈夫と考えるのではなく、早期発見と早期治療がとても大切です。

元気消失、発熱、食欲低下、体重減少、腹水や胸水、目の異常、神経症状などが見られる時は、早めに動物病院で相談することが重要です。

特に子猫や若い猫、保護猫、多頭環境で育った猫では、疑うきっかけを見逃さないことが大切です。


FIP治療でよく聞く薬や呼び方の整理

FIPでは、薬の成分名、一般名、ブランド名のような呼ばれ方が混ざって出てくるため、初めて調べる方にはとても分かりにくいです。

まずは「今よく使われている中心薬は何か」「それぞれどういう位置づけなのか」を整理しておくと理解しやすくなります。

名称 読み方 位置づけ・考え方
GS-441524 ジーエス よんよんいちごにいよん いま最も主流の中心薬です。現在のFIP治療を考えるうえで、まず基準になる名前といえます。
remdesivir レムデシビル GS-441524のプロドラッグです。経口ではなく、静脈内または皮下注で用いられることが多く、重症で内服しにくい猫や、まず注射で治療を始めたい場面で使われることがあります。
molnupiravir モルヌピラビル GS系の次の選択肢として扱われることがあります。特に廉価なジェネリックの広がりで、費用面から現実的な選択肢になってきました。
EIDD-1931 イーアイディーディー いちきゅうさんいち molnupiravir の活性代謝物として扱われる薬です。名前だけで出てくると分かりにくいですが、モルヌピラビル系の理解でつながります。
GC376 ジーシー さんななろく 歴史的に重要な薬です。ただし、今の主流ど真ん中というよりは補助的・歴史的な位置づけで理解すると分かりやすいです。
Mutian / Mutian Xraphconn ムティアン / ラプコン これは成分名というよりブランド寄りの呼ばれ方です。実質的には GS-441524系として捉えるのが近く、GS-441524系が今も最も広く使われています。

このように、薬の名前には「成分名」「薬の系統」「ブランド名のような呼ばれ方」が混ざっています。

最初は難しく感じますが、まずはGS-441524が中心レムデシビルはその近い位置にある注射系の選択肢モルヌピラビルは次の有力な選択肢ムティアンやラプコンはブランド寄りの呼び方と整理すると理解しやすいです。


名前だけを追わず、必ず獣医師と相談を

GS-441524、EIDD-1931、モルヌピラビル、ムティアン、ラプコンなど、FIPに関してはさまざまな薬の名前が飛び交います。

ただし、大切なのは名前だけで自己判断しないことです。

薬によって位置づけや入手経路、品質管理、使い方の考え方は大きく異なります。

FIPが疑われる時は、現在の診断状況や治療選択肢について、必ず獣医師と相談しながら進めることが大切です。


知っておきたい近年の変化

  • 昔はほぼ致死的と考えられていた
  • 近年は抗ウイルス薬で寛解・治癒を目指せる時代になってきた
  • 以前は非常に高額で治療断念も多かった
  • 現在は治療の選択肢が以前より広がってきている
  • 早期発見と早期治療の大切さは今も変わらない
  • 薬の名前だけで自己判断せず、獣医師との相談が重要

まとめ

FIPは、かつては診断されたらほぼ助からないと考えられていた重い病気でした。

しかし近年は、GS-441524やモルヌピラビル系の治療などにより、早期発見なら寛解を目指せる病気へと大きく変わってきました。

一方で、治療には費用や制度、薬の選択など、まだ整理して考えるべき点もあります。

不安な病気だからこそ、正しい情報をもとに、獣医師と相談しながら落ち着いて向き合っていくことが大切です。


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