複数頭飼育ではふやかしフードを知りましょう|猫の水分摂取と腎臓・泌尿器対策

複数頭飼育ではふやかしフードを知りましょう|猫の水分摂取と腎臓・泌尿器対策
QOL南大阪保護猫シェルターでは、シェルター内の猫たちのゴハンは、基本的にドライフードをお湯でふやかしたものに、少量のウェットフードを混ぜて与えています。
これは、私たちが現場で長年猫たちを見てきた中で、かなり大切だと考えている給餌方法です。
将来的には、複数頭飼育や保護猫シェルターでは、このような「水分をしっかり含ませたフード」がもっと一般的になっていくべきだと考えています。
しかし、現実にはまだまだ浸透していません。
猫はもともとあまり水を飲まない子が多く、特にドライフード中心の生活では、知らないうちに水分摂取量が不足しがちになります。
若いうちは目立った問題が出なくても、10歳を越えた頃から腎臓や泌尿器への負担が表面化してくることがあります。
猫の慢性腎臓病は高齢猫で非常に多く見られる病気であり、一度悪くなった腎臓を元通りに回復させることは難しいとされています。
だからこそ、QOL南大阪保護猫シェルターでは、病気になってから慌てるのではなく、若い時から毎日の食事で水分を摂らせることをとても大切にしています。

猫は水をあまり飲まない子が多い動物です
猫は、もともと砂漠地帯に適応してきた動物だと言われています。
野生に近い環境では、狩りで得た獲物の血液や肉に含まれる水分から、ある程度の水分を摂取していました。
そのため、犬や人間と比べると、猫は「のどが渇いたからたくさん水を飲む」という習慣が弱い子も多くいます。
もちろん、水をよく飲む習慣がある子であれば、それはそれで問題ありません。
しかし、実際には、水をあまり飲まない猫も多くいます。
そして、ドライフード中心で、水を飲む習慣もない子の場合、毎日かなり少ない水分量で生活していることになります。
これは人間でたとえるなら、ずっと水をほとんど飲まずに、乾いた栄養食品ばかりを食べているような状態に近いと考えています。
若い時は何とか問題なく見えても、年齢を重ねた時に腎臓や泌尿器への負担として出てくる可能性があります。
猫の水分摂取で気をつけたいこと
- 猫はもともと水をたくさん飲む習慣が弱い子が多い
- ドライフード中心だと食事から摂れる水分が少ない
- 水を飲んでいるように見えても、実際の摂取量が少ないことがある
- 高齢になると腎臓や泌尿器の問題が出やすくなる
- 病気になってからではなく、若い時から水分摂取を意識したい
猫の腎臓病は、なってからでは遅いことがあります
猫の腎臓病、特に慢性腎臓病は、高齢猫で非常に多い病気です。
猫の3匹に1匹ほどが生涯のどこかで慢性腎臓病に関わるという見方もあり、15歳以上の高齢猫ではさらに多く見られるとされています。
腎臓病の原因はひとつではありません。
年齢、体質、遺伝、食事、脱水傾向、他の病気など、さまざまな要素が関係します。
ただ、猫の腎臓や泌尿器の健康を考えた時に、日常的な水分摂取がとても重要であることは、多くの飼い主さんに知っていただきたい点です。
AIMなど、腎臓病に関する先端医療への期待もあります。
しかし、現時点ではまだ一般的な治療として自由に使える段階ではなく、一度大きく悪くなった腎臓を完全に元通りにすることは簡単ではありません。
実際には、腎臓病になってからは、食事療法、点滴、投薬、通院、血液検査、尿検査などを続けながら、長くケアしていくことになります。
だからこそ、QOL南大阪保護猫シェルターでは、腎臓病になってから考えるのではなく、若い時から毎日の水分摂取を増やすことが大切だと考えています。
腎臓病について詳しく知りたい方は、猫の腎臓病の基礎知識も参考になさってください。
1匹飼いと複数頭飼育では、水分管理の難しさが違います
1匹飼いの場合、その子がどれくらい水を飲んでいるかを比較的把握しやすいです。
水皿の減り方、トイレの尿量、尿の回数、尿の色、体調の変化なども、その子だけを見ていれば分かりやすいからです。
しかし、2頭以上の複数頭飼育になると話は大きく変わります。
水皿の水が減っていても、どの子がどれくらい飲んだのか分かりません。
トイレの尿量が多くても、どの子の尿なのか分かりにくくなります。
多頭飼育では、どの子が十分に水を飲んでいて、どの子がほとんど飲んでいないのかを正確に管理するのが極めて難しくなります。
だからこそ、QOL南大阪保護猫シェルターでは、飲み水だけに頼るのではなく、毎日の食事そのものに水分を含ませる方法を採用しています。
ふやかしフードであれば、食べること自体が水分摂取につながります。
複数頭飼育では、この考え方がとても重要だと考えています。
複数頭飼育で水分管理が難しい理由
- どの子がどれくらい水を飲んだか分かりにくい
- 水皿の減り方だけでは個体ごとの飲水量が分からない
- トイレの尿がどの子のものか分かりにくい
- 水を飲まない子がいても気づきにくい
- 病気の初期変化を見逃しやすい
ドライフードとウェットフード、どちらが良いのか
「ドライフードとウェットフードのどちらが良いですか」と聞かれた場合、私は水分摂取という意味では、間違いなくウェットフードと答えます。
ウェットフードは水分量が多く、食事から自然に水分を摂りやすいからです。
猫の腎臓や泌尿器のことを考えると、食事から水分を摂れるメリットは大きいと考えています。
しかし、総合栄養食のウェットフードばかりを複数頭に与え続けると、かなりコストがかかります。
保護猫シェルターのように多くの猫を継続的に世話する現場では、理想だけではなく、続けられる方法であることも重要です。
そこでQOL南大阪保護猫シェルターでは、ドライフードをお湯でふやかしたものに、少量のウェットフードを混ぜて与える方法を採用しています。
これにより、ウェットフードだけに比べてコストを抑えながら、ドライフードだけよりも水分をしっかり摂らせることができます。
猫のフード全体の考え方については、猫のフードと選び方も参考になさってください。
QOL南大阪保護猫シェルターで実践しているふやかしフード
QOL南大阪保護猫シェルターでは、すべてのシェルター内の猫たちに、基本的にドライフードをふやかしたものを与えています。
そこに少量のウェットフードを混ぜることで、香りを良くし、食いつきも上げています。
この方法であれば、1匹1匹に最低限の水分を摂取させることができます。
シェルター内で複数頭を管理していると、どの子がどれくらい水を飲んだかを完全に把握することは簡単ではありません。
しかし、ふやかしフードであれば、ゴハンを食べること自体が水分摂取になります。
QOL南大阪保護猫シェルターでは、この方法を続けているおかげもあり、もともと腎臓が悪くなかった子がシェルター内で新たに腎臓病になったケースは、現時点では確認していません。
また、尿路結石などの泌尿器系トラブルについても、ドライフードだけを与えている場合に比べて、かなり低い発生率を維持できていると感じています。
これは当シェルターでの実感と経験に基づくものであり、すべての猫に同じ結果を保証するものではありません。
それでも、保護猫シェルターとして複数頭を管理する中で、ふやかしフードには非常に大きな意味があると考えています。
吐き戻しの軽減にもつながると考えています
ふやかしフードには、もう一つ大きなメリットがあります。
それは、ドライフードの早食いによる吐き戻しの軽減です。
猫を飼っている方なら、ドライフードを急いで大量に食べたあとに、しばらくして吐いてしまう様子を見たことがあるかもしれません。
ドライフードは胃の中で水分を吸って膨らみます。
急いで食べたあと、胃の中でフードが膨らみ、胃の中がいっぱいになって吐いてしまうことがあります。
ふやかしフードの場合、食べる前の時点でほとんど膨らんだ状態になっています。
そのため、胃の中で過度に膨張しにくく、吐き戻しの軽減につながると考えています。
もちろん、吐く原因は早食いだけではありません。
毛玉、胃腸の病気、異物、食物不耐性、腎臓病、甲状腺の病気など、さまざまな原因があります。
繰り返し吐く、元気がない、食欲がない、血が混じる、体重が減るなどの症状がある場合は、必ず動物病院へ相談してください。
猫の嘔吐については、猫の吐く原因|よくある嘔吐と危険な嘔吐も参考になさってください。
ふやかしフードの作り方
QOL南大阪保護猫シェルターでは、多くの種類のドライフードを実際にふやかして試してきました。
その経験上、基本はドライフードの約3倍量のお湯でふやかすのが、もっとも扱いやすいと考えています。
たとえば、30gのドライフードであれば、約90ccのお湯を入れます。
お湯は熱湯でも大丈夫です。
ドライフードは製造時にも加熱処理されているため、家庭でお湯を注いだからといって、すぐに栄養バランスが大きく崩れて食べられないものになるとは考えていません。
ただし、長時間放置したり、何度も加熱し直したり、作り置きしすぎたりすることはおすすめしません。
ふやけるまでの時間は、夏場で大体30分、冬場で大体1時間ほどかかります。
ふやけるまでこれだけ時間がかかるということは、ドライフードが胃の中で水分を吸って膨らむまでにも、それなりの負担がかかる食べ物だと考えるきっかけにもなります。
| ドライフード量 | お湯の量 | 目安 |
|---|---|---|
| 10g | 30cc | 少量のお試し |
| 20g | 60cc | 小柄な猫・少量給餌 |
| 30g | 90cc | 基本の目安 |
| 50g | 150cc | 複数頭・大きめ量 |
| 100g | 300cc | 多頭用のまとめ作り |
QOL南大阪保護猫シェルターの基本の作り方
- ドライフードを量る
- ドライフードの約3倍量のお湯を入れる
- 夏場は約30分、冬場は約1時間を目安にふやかす
- 全体がしっかり柔らかくなったら軽く混ぜる
- 少量のウェットフードを混ぜて香りと食いつきを上げる
- その日のうちに与え、残ったものは処分する
QOL南大阪保護猫シェルターでは、朝と晩に残飯を処理し、新しいゴハンを作って与えています。
ふやかしたフードは傷みやすくなるため、特に夏場は長時間置きっぱなしにしないよう注意が必要です。
食べ残しはもったいないと感じても、衛生面を考えて処分することが大切です。
いきなり切り替えず、ゆっくり慣らすことが大切です
ドライフードしか食べたことがない猫の場合、いきなりふやかしフードにしても食べないことがあります。
特に大人猫では、急な変更に警戒する子も多いです。
子猫は比較的柔軟に受け入れてくれることが多いですが、大人猫は時間をかけて慣らす必要があります。
QOL南大阪保護猫シェルターでも、大人猫で保護されてきた子が、最初からすぐにふやかしフードを食べるとは限りません。
しかし、当シェルターで大人猫として保護されてきた子の中で、最後までこのふやかしフードを食べられなかった子はいませんでした。
大切なのは、いきなり全部を変えないことです。
まずは食べ慣れていると思われるフードを使い、ほんの少しだけ水分を含ませるところから始めます。
慣れてきたら、少しずつ水分量を増やし、ウェットフードも少量混ぜながら、時間をかけて切り替えていきます。
早い子で3週間ほど、大体2か月ほどで多くの子は慣れてくれると感じています。
切り替えの目安
- 最初はいつものドライフードに少量のぬるま湯を加える
- 嫌がる場合は、香りづけに少量のウェットフードを混ぜる
- 食べるようになったら、少しずつ水分量を増やす
- 急に全量をふやかしフードにしない
- 食欲が落ちる場合は無理に進めず、元の割合に戻す
- 体調不良や持病がある子は、動物病院に相談しながら進める
猫は食にこだわりが強い動物です。
急に変えるのではなく、猫のペースに合わせて少しずつ慣らしていくことが大切です。
ふやかしフードのデメリット
ふやかしフードにはメリットが多いと考えていますが、もちろんデメリットもあります。
まず、ふやかすのに時間がかかります。
夏場でも約30分、冬場では約1時間ほどかかることがあります。
次に、作る工程が面倒です。
毎回フードを量り、お湯を入れ、ふやけるまで待ち、混ぜ、食べ残しを処分する必要があります。
さらに、残ったフードは廃棄する必要があります。
ドライフードのように長時間置きっぱなしにすることはできません。
特に夏場は傷みやすく、衛生管理が必要です。
それでも、猫の健康を考えると、QOL南大阪保護猫シェルターでは試す価値が非常に高い方法だと考えています。
| デメリット | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 時間がかかる | ふやけるまで30分〜1時間ほどかかる | 食事時間から逆算して準備する |
| 手間がかかる | 量る、ふやかす、混ぜる工程が必要 | 毎日のルーティンにする |
| 食べ残しが出る | 残ったものは廃棄が必要 | 最初は少なめに作る |
| 傷みやすい | 水分が多いため長時間放置できない | 特に夏場は早めに片付ける |
| 最初は食べない子もいる | 大人猫は警戒することがある | 数週間〜2か月ほどかけて慣らす |
なぜ、ふやかしフードはなかなか浸透しないのか
QOL南大阪保護猫シェルターでは、ふやかしフードは今後もっと広がっていくべきだと考えています。
特に複数頭飼育では、水分摂取の管理が難しいため、食事から水分を摂らせる考え方はとても重要です。
それでも、なかなか浸透しない現実があります。
理由のひとつは、手間がかかることです。
飼い主側からすると、ドライフードをそのまま器に入れる方が圧倒的に楽です。
ふやかすには時間も手間もかかり、食べ残しも処分しなければなりません。
経済的にも、ウェットフードを増やすことには負担があります。
メーカー側から見ても、保存期間が長く、管理しやすく、流通させやすいドライフードの方が利益効率は高いでしょう。
さらに、猫が腎臓病や泌尿器トラブルになった後には、療法食、検査、点滴、通院、薬など、さまざまな医療や商品が必要になります。
はっきり言えば、病気が増えれば、それによって成り立つ市場もあります。
もちろん、すべての獣医師や研究者やメーカーが悪いという話ではありません。
しかし、猫の健康を本気で考えるなら、病気になってからの商品や治療だけでなく、病気になりにくい日常の食事管理にもっと目を向けるべきだと考えています。
たぶん、研究者も獣医師も、現場で猫をよく見ている人たちも、薄々気づいていることだと思います。
それでも広がりにくいのは、手間、コスト、業界構造、飼い主側の負担感があるからではないかと感じています。
腎臓病になってからでは遅いという意識を持ってください
とにかく覚えておいていただきたいのは、腎臓病になってからでは遅いということです。
もちろん、腎臓病になった猫にも、できるケアはたくさんあります。
療法食、点滴、投薬、血液検査、尿検査、体重管理、食欲管理など、獣医師と相談しながらできることはあります。
しかし、一度大きく悪くなった腎臓を完全に元通りにすることは難しいです。
だからこそ、若い時から水分摂取を意識することが大切です。
特に複数頭飼育では、どの子がどれだけ水を飲んでいるか分かりにくいため、食事から水分を摂らせる方法を真剣に考えてほしいと思っています。
ふやかしフードは、手間も時間もかかります。
残ったフードは捨てる必要もあります。
しかし、猫の将来の健康を考えるなら、十分に試す価値のある方法だと考えています。
QOL南大阪保護猫シェルターでは、これからも猫たちの健康を守るため、ふやかしフードを基本にした給餌を続けていきます。
注意点:すべての猫に同じ方法が合うとは限りません
ふやかしフードは、QOL南大阪保護猫シェルターでは非常に大切にしている方法ですが、すべての猫に同じ形で合うとは限りません。
糖尿病、腎臓病、心臓病、尿路疾患、消化器疾患、食物アレルギー、療法食を食べている猫などは、食事内容を変える前に動物病院へ相談してください。
また、食欲が落ちる、下痢をする、吐く回数が増える、体重が減るなどの変化がある場合は、無理に続けず、必ず獣医師へ相談してください。
特に高齢猫や持病のある猫では、急な食事変更が負担になることがあります。
猫の健康管理は、日々の観察と、必要な時の動物病院での検査が大切です。
ふやかしフードは万能薬ではありません。
しかし、複数頭飼育で水分摂取を底上げするための現実的な方法として、QOL南大阪保護猫シェルターでは非常に有効だと考えています。
参考情報
このページでは、猫の慢性腎臓病、水分摂取、ウェットフードによる水分補給、腎臓・膀胱トラブル時の飲水量増加の考え方などについて、以下の情報も参考にしています。
- International Cat Care「Chronic kidney disease in cats」
- International Cat Care「Increasing water intake」
- Today’s Veterinary Practice「Feline Chronic Kidney Disease」
- Today’s Veterinary Practice「Feeding Cats With Chronic Kidney Disease」
まとめ
QOL南大阪保護猫シェルターでは、シェルター内の猫たちに、ドライフードをお湯でふやかしたものに少量のウェットフードを混ぜて与えています。
猫はもともと水をたくさん飲む習慣が弱い子が多く、ドライフード中心の生活では水分摂取量が不足しやすいと考えています。
特に複数頭飼育では、どの子がどれくらい水を飲んでいるのかを管理することが難しくなります。
ふやかしフードであれば、食事そのものから水分を摂らせることができ、腎臓や泌尿器の健康管理、吐き戻し軽減にも役立つ可能性があります。
作るには時間も手間もかかります。残ったフードは処分する必要もあります。
それでも、猫の将来の健康を考えると、QOL南大阪保護猫シェルターでは非常に価値のある方法だと考えています。
腎臓病になってからでは遅いことがあります。
若い時から、毎日の食事で水分を摂らせる意識を持ってほしいと思います。


