慣れない猫・シャーシャー猫の慣らし方|ちゅーる50回トレーニングで無理なく距離を縮める方法【独自!QOL南大阪保護猫シェルター】

慣れない猫の慣らし方|ちゅーる50回トレーニングで無理なく距離を縮める方法
新しく迎えた猫が、シャーシャー威嚇する。
近づくと逃げる。
ケージの奥で固まっている。
手を近づけるとパンチが飛んでくる。
このような状態になると、「この子は本当に慣れるのだろうか」「このまま飼えるのだろうか」と不安になる方も多いと思います。
しかし、猫にとって新しい家、新しい人、新しい音、新しい匂いは、すべて大きなストレスです。
どんなに優しい猫でも、初めての環境では超神経質になり、攻撃的に見えることがあります。
大切なのは、いきなり触ろうとしないことです。
無理に抱っこしようとしたり、革手袋で押さえつけて撫でようとしたりする必要はありません。
猫にとっても、飼い主側にとっても、無理なく距離を縮めていき、ゆっくり家族になっていくことが大切です。
このページでは、QOL南大阪保護猫シェルターで実践している、ちゅーると孫の手を使った「ちゅーる50回トレーニング」を紹介します。
この方法は、シャーシャー威嚇する猫だけでなく、初めて子猫を迎える場合にも有効です。
猫に人間を怖い存在ではなく、「おいしいものをくれる安心できる存在」と覚えてもらうための、段階的な人馴れ方法です。

猫は愛情だけで何とかなる動物ではありません
猫を迎えたばかりの方の中には、「愛情を持って接すれば、すぐに分かってくれる」と考える方もいます。
もちろん、愛情はとても大切です。
しかし、猫は愛情だけで何とかなる動物ではありません。
猫にとっては、知らない人間、知らない家、知らない匂い、知らない音、知らない生活リズムは、すべて警戒対象です。
特に保護猫や、外で暮らしていた経験のある猫、怖い思いをした猫、子猫でも人との接触経験が少ない猫は、慣れるまでに時間がかかります。
ここで順序を間違えると、猫は「人間は怖い」「手は怖い」「近づかれると危険」と覚えてしまいます。
そうなると、かえって人馴れに時間がかかることがあります。
大切なのは、猫の気持ちを無視して距離を詰めることではなく、猫が自分から少しずつ近づける状況を作ることです。
慣らし方で大切な考え方
- いきなり触らない
- いきなり抱っこしない
- 猫を追いかけない
- 無理にケージから出さない
- 猫のペースに合わせる
- 人間は怖くないと少しずつ覚えてもらう
- 食べ物を使って良い印象を積み重ねる
YouTubeのような無理やり慣らしはおすすめしません
YouTubeなどでは、怒っている猫やパンチを繰り広げる猫に対して、革手袋を使って無理に撫でるような動画を見かけることがあります。
最初はシャーシャー怒っていた猫が、動画の後半では人間にデレデレで撫でられているように見えることもあります。
しかし、あのようなエキセントリックなやり方を、一般のご家庭で真似しないでください。
猫にとっては、はじめての環境で逃げ場のない状態で無理に触られることは大きな恐怖になります。
また、飼い主側も本気で噛まれたり、引っかかれたりする危険があります。
すぐにデレデレになる子は、もともと人間に甘えられる要素を持っていた可能性が高いと考えた方が自然です。
すべての猫が同じように急に変わるわけではありません。
特に怖がりな猫、外で長く暮らしていた猫、人間に怖い思いをさせられた猫に対しては、無理やり触ることでかえって悪化することがあります。
QOL南大阪保護猫シェルターでは、猫を力で押さえつけて慣らすのではなく、順序と段階を踏んで、人間への警戒心を少しずつ下げていくことを大切にしています。
ちゅーるを使う理由
このトレーニングでは、ちゅーるを使います。
ほとんどの猫は、ちゅーるが大好きです。
もちろん、まれに好みが合わない猫もいますが、多くの猫にとって、ちゅーるはとても強いご褒美になります。
この「大好きなもの」を使って、人間との距離を少しずつ縮めていきます。
猫にとって、人間の手は最初は怖いものです。
しかし、人間が近づいた時においしいものが出てくる経験を繰り返すと、少しずつ人間への印象が変わっていきます。
最初は「怖い」だった人間の存在が、「おいしいものをくれる」「嫌なことをしない」「近くにいても大丈夫」という印象に変わっていきます。
これが、ちゅーるトレーニングの基本です。
ちゅーるを使うメリット
- 多くの猫が好みやすい
- 少量ずつ与えやすい
- 人間と良い印象を結びつけやすい
- ケージ越しでも使いやすい
- 距離を少しずつ縮める練習に向いている
- 子猫にも大人猫にも使いやすい
ただし、ちゅーるはあくまでトレーニングの補助です。
与えすぎると栄養バランスが偏ることがあります。
回数が多くなる場合は、総合栄養食タイプを使う、量を調整する、主食の食事量とバランスを取るなどの工夫をしてください。
まずは小皿でちゅーるの味を知ってもらいます
まずは、その猫がちゅーるを食べたことがない場合、またはまだちゅーるのおいしさを分かっていない場合から始めます。
いきなり手から与えようとしないでください。
まずは、ちゅーるを小皿に入れて、その子のそばに置きます。
パンチが飛んでくる危険性がある場合は、離れた場所でも大丈夫です。
最初は、人間が見ている前では食べないこともあります。
その場合は、そっと置いて、人間は離れてください。
大人猫や保護されたばかりの猫では、恐怖とストレスで数日ほど飲まず食わずに見えることもあります。
ここで慌てて触ろうとしたり、無理に口元へ持っていったりしないことが大切です。
多くの猫は、環境に少し慣れてくると、誰も見ていない時間に食べ始めます。
ただし、子猫、持病のある猫、明らかに衰弱している猫、丸1日以上まったく食べない猫、飲水も排尿も確認できない猫は、早めに動物病院へ相談してください。
特に子猫は低血糖や脱水が早く進むことがあるため、「大人猫なら数日様子を見ることがある」という感覚で放置しないでください。
最初のステップ
- ちゅーるを小皿に入れる
- 猫の近くにそっと置く
- 怖がる場合は少し離れた場所に置く
- 人間は見つめすぎず、静かに離れる
- 食べてなくなっているかを確認する
- 食べたことを確認してから次の段階へ進む
用意するもの
ちゅーるを食べることが確認できたら、ここからが本番です。
用意するものは、ちゅーると孫の手です。孫の手が無ければ長めの細い靴べらでも構いません。
最初は孫の手を2本用意すると安全に進めやすいです。
1本は、ちゅーるをつけて食べてもらうために使います。
もう1本は、猫の顔の近くに近づけたり、少しずつ体に触れる練習に使います。
最初から手で触ろうとしないのがポイントです。
猫にとって人間の手は大きく、怖く見えることがあります。
孫の手を使うことで、人間側の安全を守りつつ、猫にも距離を取らせながら少しずつ慣れてもらうことができます。
| 用意するもの | 使い方 |
|---|---|
| ちゅーる | 人間への良い印象づけ、ご褒美として使う |
| 孫の手1本目 | 先にちゅーるを少しつけて食べてもらう |
| 孫の手2本目 | 反対の手に持ち、顔の近くや体に少しずつ慣らす |
| ケージ | 最初はケージ越しに安全な距離で行う |
| 手袋 | 慣れてきて手で触る段階の安全対策として使う |
手袋を使う場合も、無理に押さえつけるためではありません。
あくまで安全対策です。
猫が本気で噛む、本気で攻撃する、強く興奮している場合は、無理に進めず、時間を置いてください。
ちゅーる50回トレーニングとは
ちゅーる50回トレーニングとは、1本のちゅーるを一気に与えるのではなく、50回ほどに分けて少しずつ与えるイメージで行う人馴れトレーニングです。
孫の手の先にちゅーるを少しつけ、ケージの柵の隙間から少量ずつ食べてもらいます。
この時、人間は何度も近くに来ます。
何度も孫の手が近づきます。
でも、嫌なことはされません。
そして、そのたびにおいしいちゅーるがもらえます。
この経験を繰り返すことで、猫は少しずつ人間の存在に慣れていきます。
いきなり触るのではなく、まずは「人間が近くにいると良いことがある」と覚えてもらうことが目的です。
このトレーニングは、1回で劇的に変える方法ではありません。
何度も繰り返して、猫の中に安心の経験を積み重ねていく方法です。
ちゅーる50回トレーニングの進め方
細かいやり方は、下の表を見ると分かりやすいと思います。
大切なのは、最初から短い距離で行わないことです。
最初は距離を取り、孫の手も長めに持ち、ケージ越しに行います。
慣れてきたら、少しずつ距離を縮め、ケージの扉を開け、反対の手の孫の手で顔の近くや体に慣らしていきます。
| 項目 | 慣れる前 | 慣れてきたら |
|---|---|---|
| ちゅーるをつけた孫の手 | 長めに持つ | 短めに持つ |
| ちゅーるをつけた孫の手の本数 | 1本を使う | 慣れ具合により手から与える準備へ進む |
| ケージ | ケージ越しで柵の間から行う | ケージの扉を開けて行う |
| 反対の手で持つ孫の手 | 最初は使わない | 少しずつ使い始める |
| 反対の手の孫の手の持ち方 | 長めに持つ | 短めに持つ |
| 反対の手の孫の手の使い方 | ちゅーるをあげながら顔の近くに近づけるだけ | ちゅーるをあげながら体のいろいろな部位に少しずつ触る |
| 手で触る段階 | まだ触らない | 安全のため手袋をつけて少しずつ触り、その後素手へ進む |
| ちゅーるの与え方 | 1本を50回ほどに分けて連続で与える | 途中でケージから離れたり姿を消したりして間隔を開ける |
| 頻度 | 無理のない範囲で繰り返す | 食事バランスに注意しながら継続する |
最初は、孫の手の先にほんの少しだけちゅーるをつけます。
それを猫が舐めたら、また少しだけつけます。
これを何度も繰り返します。
1本のちゅーるを一気に与えて終わりにするのではなく、50回ほどの小さな成功体験に分けるイメージです。
猫が食べた。
人間が近くにいても嫌なことが起きなかった。
また食べた。
また嫌なことが起きなかった。
この繰り返しが、人間への警戒心を少しずつ下げていきます。
慣れてきたら、触る練習に進みます
猫がちゅーるを欲しがるようになってきたら、次の段階に進みます。
反対の手に持った孫の手を、ちゅーるをあげながら少しずつ顔の近くに近づけます。
最初は触らなくて大丈夫です。
ただ近くにあるだけで慣れてもらいます。
それに慣れてきたら、ほんの少しだけ体に触れます。
最初は顔まわりではなく、背中や肩のあたりなど、比較的受け入れやすい場所から始める方が安全です。
触った瞬間に怒る場合は、まだ早いです。
無理に続けず、前の段階に戻ります。
孫の手に慣れてきたら、次は手袋をつけた手で少しずつ触る練習へ進みます。
手袋で触る段階でも、押さえつけたり、逃げ場をなくしたりしないでください。
あくまで、ちゅーるをもらいながら、体に触れられることに少しずつ慣れてもらう練習です。
最終的には、素手でも自然に撫でられる状態を目指します。
触る練習の順番
- 反対の手の孫の手を近づけるだけ
- 顔の近くにあっても怒らない状態を作る
- 背中や肩などに孫の手で軽く触れる
- 触られても食べ続けられるようにする
- 手袋をつけた手で短時間触る
- 素手で短時間触る
- ちゅーるなしでも自然に撫でられる状態を目指す
最終目標は、ちゅーるなしでも自然に撫でられること
このトレーニングの最終目標は、いきなりケージの前に行って扉を開けても、猫が怒らず、ちゅーるがなくても自然に撫でさせてくれる状態になることです。
もちろん、すべての猫が同じスピードでそこまで進むわけではありません。
数日で変わる子もいれば、数週間、数か月かかる子もいます。
大切なのは、猫の様子を見ながら、その子に合ったペースで進めることです。
途中でシャーと言われても、すぐに失敗だと思わないでください。
トレーニング中はちゅーるが欲しくなって、自分から前に出てくることがあります。
しかし、5分後にケージから離れて戻ってくると、また以前のようにシャーシャー猫に戻っていることもよくあります。
これは珍しいことではありません。
その瞬間だけ慣れたように見えても、猫の中で人間への警戒心が完全になくなったわけではないからです。
だからこそ、根気強く、このトレーニングを繰り返し続けることが大事です。
途中で離れる練習も大切です
慣れてきたら、ちゅーるを連続で与えるだけでなく、途中でケージから離れたり、姿を消したりする練習も入れていきます。
最初は、1本のちゅーるを50回ほどに分けて連続で与えても構いません。
しかし、慣れてきたら、少し与えてから一度離れ、また戻って続きを与えます。
これを繰り返すことで、猫は「人間が来る」「人間が離れる」「また来る」という流れにも慣れていきます。
人間が近づくたびに強く緊張するのではなく、日常の中で自然に人間が出入りすることに慣れてもらうためです。
最終的には、ちゅーるがない時でも、人間が近くにいても落ち着いていられる状態を目指します。
子猫を初めて迎える場合にも有効です
この方法は、シャーシャー威嚇する猫だけのものではありません。
子猫を初めて迎える場合にも有効です。
子猫は大人猫より柔軟なことが多いですが、それでも新しい環境では怖がることがあります。
初日から無理に抱っこしたり、家族全員で囲んだり、追いかけ回したりすると、子猫にとっては強いストレスになります。
子猫の場合も、ケージを安心できる場所にして、そこで人間の存在に少しずつ慣れてもらうことが大切です。
ちゅーるやご褒美を使って、人間が近づくこと、手が近づくこと、声をかけられることに、良い印象をつけていきます。
最初からベタベタ触るよりも、少しずつ信頼関係を作る方が、その後の関係が安定しやすくなります。
子猫の迎え方については、子猫を迎えた初日にすることも参考になさってください。
ケージから出すタイミングを間違えないこと
慣れない猫を迎えた時、「いつまでもケージに閉じ込めているのはかわいそう」と感じる方はとても多いです。
その気持ちは分かります。
しかし、時期尚早にケージから解放してしまうことで、かえって猫が人間に慣れにくくなることがあります。
家の中に隠れ場所がたくさんある状態で、人間を怖がる猫を自由にしてしまうと、猫は人間から逃げ続ける生活になってしまいます。
その結果、家庭内にいるのに人間と関係が作れない、いわゆる「家庭内野良猫」のような状態になることがあります。
家庭内野良猫とは、人間が怖く、人間を好きになれず、人間が活動している日中は隠れて出てこず、人間が寝静まってから慎重に出てきて食事と排泄だけをするような猫のことです。
こうなってしまうと、猫にとっても人間にとっても、お互いが良い関係になりにくくなります。
もちろん、すべての猫を長期間ケージに入れ続ければ良いという話ではありません。
しかし、怖がりな猫や人馴れしていない猫は、まずケージ内で人間に慣れてから、段階的に行動範囲を広げることが大切です。
ケージから出す前の目安
- 人間が近づいても強くパニックにならない
- ケージ越しにちゅーるを食べられる
- 扉を開けてもすぐ攻撃してこない
- 短時間なら撫でられる、または近くに手があっても落ち着いていられる
- トイレと食事が安定している
- 部屋の脱走対策ができている
- 隠れ場所を完全に人間が管理できる状態にしている
猫をケージから出す時は、いきなり家中を自由にするのではなく、まずは一部屋から始めるのがおすすめです。
その部屋でも、入られると困る場所、捕まえられなくなる場所、脱走につながる場所は事前にふさいでください。
猫のケージの考え方については、猫のケージは必要?も参考になさってください。
家族全員で同じルールにすることも大切です
猫の人馴れトレーニングでは、家族全員でルールを統一することも大切です。
ある人はゆっくり進めているのに、別の家族が急に手を入れて触ろうとする。
ある人は静かに接しているのに、別の家族が大声で近づく。
このようなことがあると、猫は混乱します。
特に子どもがいる家庭では、猫を見たい、触りたい、遊びたい気持ちが強くなりがちです。
しかし、人馴れしていない段階では、家族みんなが我慢することも必要です。
猫に慣れてもらうためには、「この家の人たちはみんな怖くない」と覚えてもらうことが大切です。
そのためにも、接し方、声の大きさ、ケージの開け方、ちゅーるをあげる頻度、触るタイミングを家族で共有しておきましょう。
すべての猫が完全に人馴れするとは限りません
この方法は、多くの猫に有効だと感じています。
しかし、すべての猫がこの方法で必ず人間との関係がうまくいくとは限りません。
特に、人間とほとんど接することなく大人猫になり、長く野良生活をしてきた猫は一筋縄ではいきません。
人間との生活そのものが、強いストレスになる子もいます。
そのような猫に対して、無理に完全な家猫化を目指すことが本当にその子の幸せなのかは、慎重に考える必要があります。
ストレスばかりを抱えながら人間との生活で長く生きるより、短命であっても自由に外で生きる方が幸せな子もいるかもしれません。
もちろん、外の生活には交通事故、病気、ケガ、飢え、暑さ寒さ、虐待などの危険があります。
だからこそ、簡単に「外の方が幸せ」と決めつけることもできません。
しかし、人間の都合だけで「必ず家猫にするべき」と考えるのではなく、その猫の性格、年齢、経験、ストレスの度合いを見ながら判断することが大切です。
保護猫活動では、猫ごとに最善が違うという視点も必要です。
まとめ
慣れない猫やシャーシャー威嚇する猫に対して、いきなり触ろうとしたり、無理に抱っこしようとしたりする必要はありません。
猫にとっても、飼い主側にとっても、無理なく距離を縮めていくことが大切です。
ちゅーる50回トレーニングは、ちゅーると孫の手を使って、人間への警戒心を少しずつ下げていく方法です。
最初は小皿でちゅーるの味を知ってもらい、次に孫の手の先に少しずつちゅーるをつけて、ケージ越しに与えていきます。
慣れてきたら、反対の手の孫の手を近づけ、少しずつ体に触れる練習へ進みます。
最終目標は、ちゅーるがなくても自然に撫でられるようになることです。
ただし、焦ってケージから出してしまうと、家庭内野良猫のようになってしまうことがあります。
ケージ内でしっかり人間に慣れてから、段階的に行動範囲を広げることが大切です。
すべての猫が同じように慣れるわけではありません。
その子の性格、年齢、経験、ストレスの度合いを見ながら、無理なく、根気強く進めてください。
猫は愛情だけで何とかなる動物ではありません。
順序と方法を間違えず、少しずつ信頼関係を作っていくことが、猫と人間がお互いに幸せに暮らすために大切です。


